家族とつながる

思いが伝われば心が満たされる

今は亡き母が、ある日ベッドの上で不可思議な動作をしていました。
認知症を患う母に「母さん何をしているの?」と尋ねる私。
よく見ると身体を洗う動作をしています。そのうちに手で鼻をかんでベッドカバーにつけています。しまいには唾を吐き出しました。どうやらお風呂の側溝に吐き出しているつもりらしい。
「何しているの!まったく手を焼かすんだから!」。私は、母のことなどまったく考えもせず、ベッドカバーについた鼻水の処理をしていました。

そのときでした。近くに住む私の娘が訪ねてきたのです。
娘は、「どうしたの?大きい声を出して」と私に向かって言いながら母のところへ向かいました。
「おばあちゃん、こんにちは」。母の様子を見て、入浴だと察した娘は、次のように、語りかけました。
「おばあちゃんはお風呂に入っているのね。じゃあ私が洗ってあげる」。そう言いながら母の洋服の上から優しくタオルで体をさすってあげたのです。
ひととおり終わった後、今度は熱いタオルを絞り、母の手、首、顔を拭き、「さあベッドに戻りましょう」と対応したのです。
母はフーッと大きな息をして、満面の笑みで、「こんなに優しいお風呂に入ったのは初めて、良かったありがとう」と娘に頭を下げました。
娘と母の触れ合いを見て、私は、感動と自分に対する情けなさで涙が溢れました。

「お母さん、私、ダメだね。イライラして怒ってばかりで、自分の大変さばかりで」。
その言葉を聞いていた娘は、「大丈夫、大丈夫。ミーちゃん (私の愛称です。70歳ですがお許しを)は毎日のことだもの。私は時々だもの。頑張っていると思うよ」。
認知症の母と娘が教えてくれました。思いが伝われば心が満たされることを!すべての出会いに感謝です。

 

Takayo.maruyama

Takayo.maruyama

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昭和22年鹿児島県生まれ。51年、「子どもに学ぶ家庭教育」の開発者・小林謙策氏に師事。
以来、自らの子育ての反省と実践を通し、国内はもとより海外でも多くのお母さんたちに「だいじょうぶ、あなたはいいお母さん」と心からのエールを送ってきた。現在も講演会、講座などの講師を務めながら、傾聴ボランティアも行なっている。

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