社会とつながる

氷が溶けると春になる

不登校の親会の世話人をしていた頃、春の例会で、出た話題です。

小学校のテストで、「氷が溶けると何になる?」という問題が出ました。不登校の子が書いた答えは「春」でしたが、採点は×でした。先生の正解は「水」だったのです。

「この子のセンス、素晴らしいじゃない。それを×にして、何のコメントもないなんて。こんな杓子定規な先生だから、子どもが学校に行きづらくなるのよ。」
「詩的で想像力豊かで、素敵な感性よね。これを評価してあげたいわ。あなた、子どもをほめてあげなきゃだめよ」

親会はこの話題で盛り上がりました。氷が溶けると春になる−私たちの忘れがちな自然で素朴で美しい感覚を不登校の小学生が蘇らせてくれました。雪や氷は春の日差しを浴びて少しずつ溶けていき、その合間から若草や木の芽が顔を出し、春の息吹が地上を包んでいきます。これは、不登校の子どもたちにも深く通じることだと思います。

学校や友達、先生など様々な要因で傷ついたり疲れ果てたりして、自分の命と心を守るために固く閉じざるを得なくなった不登校のこどもの心身は、真冬の季節のように固くこわばってしまいます。

親や家族、周囲の人たちは戸惑い、悩み、あるいは怒り、その子を動かそうとしますが、子どもがその期待に応えてくれることはめったにありません。その子は生きているだけで精一杯なのですから。

しかし、やがてその子の心にも春が甦ってきます。春の日差しのように暖かな、親や家族の愛の眼差しが固く閉じた心の氷を溶かしてくれるからです。そしてその子は、自分らしい歩みを一歩ずつ、自分の手応えや周りの反応を確かめながら進めていきます。

冬から春に移り変わるには一定の月日がかかるように、その子が立ち上がるためにはある程度の時間が必要です。心が癒され、体内に行動へのエネルギーが貯まるための期間は、十分に保障されなければなりません。

その時に大切なことは、子どもを信じることではないでしょうか。人に必ず仏性(ぶっしょう=仏の性質)があるように、その子には本来、よりよく生きたいという強い願いとその実現に向かって進む力があることを信じて、焦らず、急がせずに寄り添っていきたいと思うのです。

「氷が溶ければ春になる」この言葉を胸に収めてよく味わいたいですね。

 

田中登志道

田中登志道

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1950年茨城県生まれ。公立高校の教師をしながら不登校児支援ボランティアの活動に取り組んだ。1995年に全日本カウンセリング協議会認定カウンセラー2級を取得。2000年にフリースペースを設立し、進路相談や学習指導、カウンセリングにあたった。2008年、公立高校教頭の職を辞し、教育カウンセラーとして不登校、引きこもりの子どもを抱える家族の支援を続ける傍ら、生活困難者の自立支援、路上生活者の援助、障害者と共に生きる活動などに携わっている。
著書「不登校からの出発」(佼成出版社刊)
  「不登校かな!?と思ったときに読む本」(佼成出版社刊)

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