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第5回 開発僧(かいはつそう)の存在を知る

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休みになる度にタイを訪れるようになった大学時代。私は興味を魅かれる方たちに出会いました。開発僧(かいはつそう:プラ・ナック・パッタナー)、当時タイでこう呼ばれていたお坊さまたちです。その代表的な一人が森の寺スカトー寺の住職であった故カムキエン・スワンノー師。ご縁のあった日本人僧プラユキ・ナラテボー師の先生です。

カムキエン師は、僧侶としての修行に励まれる一方で、貧困・病気・諍いなどの問題が多発していた村人の現実的な苦しみを解決しようと、様々な取り組みをしていました。スカトー寺のあるターマファイワン村は、1960年代に森を切り開き他の地域から移住してきた人々の村でした。当初は村の治安が悪く、喧嘩が絶えず、酒に溺れる人もおり、警察や学校などの公的機関もない状態でした。

タイの村ではどんな小さな村でもお寺があります。寺は村人たちの心の支えでもあり、村のコミュニティ形成に重要な役割を果たしています。たとえそれが経済的に貧しい村であっても同じで、ターマファイワン村にもまた小さいながら寺が建てられました。そこをカムキエン師が訪れ、修行を始められたのでした。

カムキエン師は若い時からよく人助けをしていて、出家前にはモータムという民間呪術師として村人の相談に乗っていました。仏法に触れ、生涯の師となるティアン・チッタスポー師と出会いスカトー寺での修行を始めます。しかし彼は村人たちの状況、諍いや貧困などの現状を目の当たりにし、僧侶の身でできることを模索しました。そして取り組んだのは、寺内での保育園事業でした。

そのきっかけとなった出来事がありました。村人のほとんどは農業に従事していますが、大人が働いている間、幼い子供たちも一緒に畑に行かなければなりませんでした。預ける場所がなかったからです。ある日、村人の子供の一人が、マラリアにかかって死んでしまいました。カムキエン師はそのことを知り、昼間子供たちをお寺で預かって、ご飯をあげたり、文字を教えたりすることにしました。農村部の貧困問題は当時とても深刻で、お腹を空かせた子供達が多くいました。当時の激動するタイ社会の中にあって、カムキエン師のように僧侶でありかつ社会問題に取り組む方たちを、いつしか人は「開発僧」と呼ぶようになっていったのでした。

なぜ私が開発僧に興味を持ったのか。それは「自分の悟りしか興味がないはずの小乗仏教のお坊さんの中に、他者のためにという大乗仏教的な活動をしている方がいるのか!」と思ったからです。ご存知のようにタイの仏教は日本に伝わってきた大乗仏教と違い、「上座部(テーラワーダ)仏教」と呼ばれるもので、小乗仏教とも言われました。小乗仏教という言葉は大乗仏教の側から蔑みを含んだ言葉であるとして、今ではあまり用いられていません。しかし当時の私の意識はまさに「タイの仏教=小乗仏教」というステレオタイプでしたから、少し蔑んだ見方をしていました。そして開発僧の動きに何かしら新しい時代の動きがあるのではないかと感じていました。

しかし私のその予測は、いい意味で外れます。予想もしなかった学びに、私自身が出会ったのです。気づきの瞑想—それが私にとっての新たな出会いになりました。

写真:「スカトー寺フェイスブック」より拝借

 

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浦崎雅代

浦崎雅代

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1972年沖縄生まれ。東北タイ在住。タイ仏教に関する翻訳や通訳・気づきの瞑想ファシリテーター。note(有料記事)にてタイ仏教の説法を毎日翻訳
 https://note.mu/urasakimasayo

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