エッセー

「愛すべき来訪者達」#6

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シジュウカラが逃げ込んできて、救い出した出来事があった暫く後のことです。
我が家に今度は人が助けを求めて、飛び込んで来ました。それも若いトビッキリの美人だ。兄が会社で付き合っている人がいるとは聞いていた。兄の不在の平日朝、その人は仕事に行くスーツ姿に小さなバッグのみを持ってやって来た。

このままここに住まわせて欲しい。家に帰ると母親から無理やり東南アジア人の大金持ちと婚約させられると云う。母親は西洋の人だ。この美人さんは日本人との混血だ。只唖然とするばかりだが、話をよく聞き、母は受け入れた。但し、結婚する迄は兄とは別の部屋で住み、間違いは起こさないことが条件だった。そこで私の部屋が明け渡された。私は既に社会人となっており、会社の寮に移った。その人の妹が、こっそりと連絡役として、時々我が家に姿を現した。

そこから、話はとんとん拍子に進み、先方の母親が承諾しないまま結婚することになった。この女性の出た大学の教会が式場になった。当人同士が準備を進めたが、母が全ての段取りをした。息子と娘を同時に結婚式に送り出す様だった。先方の父親は内々喜んで出席したい旨伝わってきた。母親の方は出席するか分からない。西洋人の母親次第で全てが仕切られる家らしい。どうなることやら分からない。

式当日を迎えた。式場に行ってみると、先方の両親が来ていた。娘の反逆に怒っていたが、最後は晴れの日に祝福にやって来た。我が家の家族一同とは勿論のこと初対面だ。双方笑顔に溢れた、質素な良い結婚式だった。

スノーは家に来た順番で、序列を決めているらしい。兄嫁より自分の方が上とばかりの振る舞いをした。一家団欒で炬燵の一角にスノーが陣取っている。そこに入れてと兄嫁が入ろうとしても席を譲らない。足を踏ん張っている。又、逆の時には、兄嫁を頭で押してどかせようとする。スノーが意地悪しているが、最後は譲った。色々な場面で笑顔の多い家族になった。

一方、父の手がけている国際的な仕事は順調な流れに乗っていた。兄は誰もが羨むような会社に入り、結婚した。私も泥臭いが、地に足の着いた仕事の出来る会社に就職した。会社人間に成りつつあった。妹は母と同じ私立の女学校に入り、楽しく学生生活を過ごしていた。我が家の問題は、一つの山場を越えて、先が見えて来た。

そのような状況下、スノーとのお別れの日が突然やって来た。あたかも、我が家の崩壊を防ぐ、繋ぎ役スノーのお役目が終わったと云ったタイミングだった。

その日は週末の法事の日で親戚を含め色々の人が集まった。スノーの好きな人々は全部来ていた。スノーはご機嫌だった。子供達からも好物のさきイカを貰い、一緒に鬼ごっこの様に家の中を駆け回っていた。急変したのは3時過ぎ頃だった。スノーが突然具合悪そうに動かなくなった。子供達に寄って来るなと云わんばかりに唸り声を出した。歯も剥き出している。直ぐに近所の獣医に来て貰った。診たては、心臓が悪く重体で、手の打ち様がない。ヒラリヤに感染していた。今晩が山場で、越せるかどうかと言って帰った。

スノーに柔らかい布団で寝る場所を作ってやった。苦しそうだが、そこで静かに横たわっていた。夜半になると、いつの間にかスノーが玄関の所に移動している。前足が崩れそうに成るのを必死に堪えている。父が帰って来るのを察知して、最期の出迎えに出たのだ。健気な後ろ姿だ。子供用のお数珠を持って来て、首から掛けてやった。すると、スノーがホットした様な、何とも言えない嬉しそうな顔をした。

やがて、父が戻って来た。もう飛びつく力もなく、弱々しく尾を振っているだけだ。父に抱きかかえて貰って、柔らかい布団の上に身を横たえた。最期の時は誰も見ていない。夜中に布団から抜け出し、自分本来の居場所である勝手口の上がりかまちで、息絶えていた。
穏やかな表情をしていた。

首にお数珠を巻いたスノーは、火葬してペット墓場に葬られるため、迎えの車に乗せられた。「今度は人間の子に成って帰っておいで。」と家族全員の涙で見送られた。

それ以来我が家ではペットは飼わないことになった。

以上

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イチゾウ

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団塊世代、重厚長大産業出身、第二の人生真っ只中。

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