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第6回 気づきの瞑想との出会い〜「いま、ここ」の手〜

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スカトー寺を初めて訪れたとき、見慣れない風景に出会いました。それは瞑想の様子でした。瞑想というと、皆さんはどのようにイメージされますか? きっと多くの方が、静かに目を閉じてじっと座って動かず、凛とした張り詰めた雰囲気が漂う、、そんな風景を思い出されるのではないでしょうか。

しかしスカトー寺は、ちょっと様子が違いました。瞑想を実践している人に「動き」があるのです。

前回お話しした故カムキエン・スワンノー師が住職をされていたスカトー寺。そこは歩行瞑想と手動瞑想が重点的になされています。

歩行瞑想は、おおよそ5メートルくらいの距離を、行ったり来たり自然なスピードで歩くこと。そして手動瞑想は、手を14の動きを一つの型とし、その動きを何度もくりかえすという方法での瞑想法です。自然な動きを伴う瞑想スタイルで、気づきを高める(チャルーン・サティ)瞑想と呼ばれています。

私は初めに手動瞑想を見たとき「あれ?皆何をやっているのだろう?」と疑問が生じました。そして日本人僧のプラユキ・ナラテボー師から、瞑想のやり方を教えてもらうと「今この手をただ感じるだけでいいですよ。この手は、過去の手でも、未来の手でもなく、今ここにありますね。それを感じていますか?」
と、問いかけられました。私はちょっと狐につままれたような気持ちになりました。そして私の心の中でこんなおしゃべりが始まったのです。

「今、ここの手? 手? 動き? 気づくって何? 感じる?
これがどんな意味を持つの? これって修行?」

手は師の真似をして動かしているのですが、頭の中ではとめどなく思考があふれてきます。

そんな時に「今、この瞬間は手に気づいていますか?」とプラユキ師の声。ハッとしました。その瞬間、手が動いていたのに、全く気づいていなかったのです。考え事の真っ最中でした 。そしてその時ふと、ある体験を思い出したのです。

私は信仰深い母の背中を見て育ち、幼い頃からお経をあげることが日常でした。何度もあげていましたので、次第にお経をそらんじることができます。すると時おり、お経を唱えているのに、考えごとでいっぱいになっていることがありました。気がついたらお経は終わっていた日も少なくありません。 お経をあげながらも心ここにあらず。。そんな自分の体験を、この気づきの瞑想で思い出したのです。

「今ここの手に気づく。動いた時にパッとこの手に戻っていきましょう。そしてこの14の手動瞑想の型がある時だけではなく、日常の一コマ一コマにも気づいていきましょうね。ご飯を食べている時も、歩いている時も、お経をあげている時も、ただそれに気づく。この気づきは高めることができるんですよ」

そうプラユキ師に教えていただき、なるほど! 今、やっている一つ一つのことにしっかり「気づく」ということがトレーニングできるのだと知りました。気づきとは何だろう? 瞑想とは何だろう? ブッダがなされた修行法を今に引きつぐタイ仏教。そして、気づきが高められるということはどういうことなのだろう?

私はそれまで遠い存在だった「瞑想」という実践が、少しずつ身近になっていくのを感じました。

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浦崎雅代

浦崎雅代

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1972年沖縄生まれ。東北タイ在住。タイ仏教に関する翻訳や通訳・気づきの瞑想ファシリテーター。note(有料記事)にてタイ仏教の説法を毎日翻訳
 https://note.mu/urasakimasayo

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