家族とつながる

お客の多い家族の記憶④「世界の七不思議」

在家仏教を信仰する両親と三人兄妹(私は末っ子二女)。
そしてなぜか次々とわが家を訪れる人々との、なんとも不思議な日々。
昭和の終わりの混沌とした記憶を、自らが子育て奮闘中の今、順不同に綴ってみる。
飽くまで自分の記憶を頼りに、多少、盛りつつ♪

☆世界の七不思議

昭和50年代、私が小学生だったあの頃、わが家に一番頻繁に訪れていたのは、間違いなく彼女だろう。

マンションの2フロア上に、夫と幼い一人息子との3人暮らし。
“みっちゃん”は、ほぼ毎日うちの母をたずねて来ていた。

「お母さ〜ん。今日クッソ暑いね」

そこそこ美形で、しかも子育て中の母親なのに、言葉遣いにかなり難アリ。
当時の夏で「クッソ暑い」なら、今夏の暑さをみっちゃんはどう表現するのだろう。
さらにかなりのヘビースモーカーで、わが家でもよくタバコを吸っていた。
(思えば喫煙に寛容な時代だった)

みっちゃんが吐き出すのは煙だけではなかった。
毎日、夫の悪口をとめどなく垂れ流す。
「じょ〜だんじゃねぇっつーの。あのバカ男、死ねばいいのに」

みっちゃんより10歳以上年上のうちの母に、「気持ちは分かるけど、そんなこと言わないの!」とたしなめられてもお構いなし。

子どもの私に何となく理解できたのは、みっちゃんのダンナさまはギャンブルと女性が好きで、家に帰ってこないこともあるということ。
こういった来訪者のお陰さまで、小学生の私は「結婚すればみんな幸せになれるってわけでもなさそうだ」というこの世の現実を学んだ。

母は「相手を恨んでいても何も変わらないのよ。まずは自分だからね。みっちゃんが見方を変えれば、ダンナさんも変わっていくわよ」などと話しながら、
それでも止まらない愚痴を根気よく聞いていた。

そんなみっちゃんと母の会話を、私は本を読んだりテレビを見たり、みっちゃんの一人息子をあやしたりしながら聞き流していた。

でもその日、私はみっちゃんのある一言が気になった。

「まったくさぁ、これでよそに子どもでも作ってきた日にゃあ、ほんとぶっ殺してやりたくなると思うよ」

…え!? 子どもって結婚したら自然とお腹に宿るものなんじゃないの?
おじちゃんがよそで子どもを作るってことは、別の人と結婚するということ!?

どうしても知りたくなり、みっちゃんに聞いてみた。
「ねえ。よそに子どもってどういうこと?
結婚しないとできないんじゃないの?
子どもってどうしたらできるの?」

すると、立てた片膝にひじを乗せ、
いつもより細くゆっくりと煙を吐き出しながら、目を細めてみっちゃんは言った。

「世界の七不思議よねぇ…」

悲しげにも、可笑しげにも見える、謎めいた表情。
まさにけむに巻かれた私は、それ以上突っ込んで聞くことができなかった。

命は不思議な巡り合わせによって生じるらしい。
そして男女の関係は、子どもが思うほど簡単ではないらしい。
10歳そこそこの私に、そんなことを教えてくれたみっちゃんもまた、私にとっては人生の師なのだと思う。

次は、“そちらの筋“から足を洗うことになったご夫婦のお話。

 

三代目 B soul主婦

三代目 B soul主婦

投稿者の記事一覧

祖母の代から始まり、在家仏教信仰三代目のアラフィフ主婦。信仰に篤い両親だが、一切押し付けられることなく自由奔放に育つ。仕事も遊びも全力投球の20代30代を経て、高齢出産を経験。
やっと自ら仏さまの教えを求めるようになり、特に根本仏教に惹かれ、「子育てと信仰、ときどきお仕事」な日々を楽しむ。

関連記事

  1. 思いが伝われば心が満たされる
  2. 1日たった10秒のハグ(前編)
  3. あなたのことをいっぱい聴かせてください
  4. お客の多い家族の記憶③「コンビニと花火とガイセンシャ」
  5. 母と過ごした最後のお正月です
  6. 娘との温かな時間
  7. 娘からの電話
  8. さくらちゃん、新たな一歩を踏み出せたよ!

新着記事

車椅子の人とダンスを楽しむ

夜7時が近づく頃、東京都台東区の松が谷福祉会館には、ワゴン車から降りる車椅子の人やその家族、ボランテ…

【ヤッシーのきまま見聞録⑤】

私の名前はヤッシー。会社人生は終わった人ですが、第二の人生はこれから。会社の重しが取れた身軽さで見た…

家族の諸行(因縁によって生じたこの世の一切の事) 「父の場合」#3

下関から、父のいる東京に合流できる日は、一年後になった。下関駅から、車中一泊2日の長旅だった。母は痩…

井の中の蛙、秀樹という船で“芸能海”に飛び込んだ〈初航海編〉

ぶっつけ体当たりで度胸がついた右も左もわからずに飛び込んだ私への使命は、「会員数激減のファン…

井の中の蛙、秀樹という船で“芸能海”に飛び込んだ〈出港編〉

万に一のまさか、神様の間違い?神様の気がふれた。あの時は本当にそうだったと今でも思う。神様っ…

家族の諸行(因縁によって生じたこの世の一切の事) 「父の場合」#2

父が就職した紡績会社は、業界最大手の一つ。後年は繊維不況や組合問題等の苦難を乗り越え、且つ、化粧品分…

PAGE TOP