人生へのまなざし

診断…天国と地獄を同時に味わう

大人になってからADHD(注意欠陥多動性障害)と診断された私が、子供の頃からの苦しい経験を振り返って見えてきた、さまざまなコトを綴ります。一人でも多くの方のお役立てることを祈って。

私とADHDとの出逢い。それは、看護師として手術室で働いていた時でした。

24歳、看護師2年目。何度も経験した手術は徐々に覚えていきましたが、新しい手術を担当する際は事前に手術の流れをほぼ完璧に覚えなくてはならず、前日、手術の内容をノートにまとめ、それを覚えるのですが、いざオペの時間になると緊張なのか頭が真っ白になってしまい、思い出せないことがほとんどでした。

当日は、お世話係の先輩が仁王立ちで「次は? 次は? 先生手出してるよ! 昨日覚えてきたんでしょ!?」と言い、ドクターからも「君遅いよ。早く。」と言われ、師長からは「あなたいつになったら独り立ちするのよ。この給料泥棒が! いつもそうやって泣いてばかりでムーミンみたいね。」と言われることもありました。

注意されても、「その通りだよ。なんで私はできないんだろう。カンペを見ながらできる病棟に行きたいな。こんなところ、私には向いてないんだ。」としか思えず、毎日泣いてばかりでした。

ある日、師長が変わり、その師長がメンタルヘルス科のドクターに相談してくれ、受診をする機会を設けてくれました。

その時に、「覚えたいのに覚えられない、集中したいのに集中できない。予習復習しても時間が足りなくて睡眠時間もとれない、先輩に怒られてもその通りとしか思えずどうしたらいいのかわからなくて泣くことしかできない。やる気はあるはずなのに。」など伝えました。

すると、「もしかしたらこの薬が合うかもしれないから飲んでみる? ADHD、聞いたことある? それと、うつ状態になってるから、うつ状態っていう診断名で3ヶ月は仕事はお休みね。僕が師長に伝えておくから、このまま自宅へ帰っていいよ。しばらくは羽を伸ばしながら自宅でゆっくり過ごしてね。」と言われたのです。

その時から丸二日、泣きっぱなしでした。ADHDについて調べれば調べるほど、まるで私の性格や欠点、悩みばかり書かれていて、「この病気のせいで、私は約20年間苦しめられてきたんだ。あの時もそう。この時もそう。この病気がなければこんなに辛い思いはしなかったんだ。」という辛い気持ちと、「でも、20代の今わかってよかった。きっとまだまだADHDだと知らずに苦しんでいる大人はたくさんいると思うし、まだ私は楽な方だったのかもしれない。これで残りの人生が変えられるかもしれない。」という喜び。

まるで天国と地獄を同時に味わうような感覚でした。

これが、わたしがはじめてADHDと診断を受けたきっかけでした。


■ADHDとは
ADHD(注意欠陥多動性障害)とは、不注意(集中力のなさ)、多動性(落ち着きのなさ)、衝動性(順番待ちができないなど)の3つの特性が中心として表れる、発達障害の一つ

ERIKO

ERIKO

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茨城県生まれ。幼い頃はおてんばで、木登りやかけっこをしては傷だらけの少女だった。
物心つく頃から人間関係で悩むようになり、自分を含め、あらゆる命がなぜその姿でこの世に誕生するのかを問うようになる。

23歳で看護師になるが、度重なるミスに上手く対処出来ず、うつ状態になる。
24歳でADHD(注意欠陥多動性障害)と診断を受け、治療薬を内服し始めると、ミスは激減。それまで苦手と感じていたあらゆる物事が徐々に解消され、人生が大きく変わっていく。
患者さんと接する中で、「私にしかわからない気持ちを、あなたは理解してくれる。あなたが担当で良かった。」と言われたのをきっかけに、自分自身のこれまでの人生を人の幸せのために役立てたいと思うようになる。

現在は看護師をしながら、東京都杉並区を中心に活動している『Let it be〜発達障害の子を持つ親の会〜』で、当事者としての思いを共有し、当事者だからわかる子供たちの気持ちを代弁している。

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