エッセー

ヤッシーのきまま見聞録⑧

私の名前はヤッシー。会社人生は終わった人ですが、第二の人生はこれから。会社の重しが取れた身軽さで見たこと、聞いたことなどをきまま(気まま、生まま)にお伝えします。きままなので、悪しからず不定期です。

「コジロー君との思い出2−大阪編」

2、3年もするとコジロー君はすっかりわが家の飼い犬となっていました。餌に鶏の砂肝を与えていたのがよかったようで毛並みがとてもよく、ご近所の犬好きの女性の方から「いい毛並みね。触らせて!」などと言われて人気者でした。散歩で一緒になるご近所の小型犬からも結構慕われていて“人見知り”ならぬ“犬見知り”の激しい、気難しい小型犬が「コジロー君のことは好き!」というモテモテぶりでした。

犬の世界のモテる条件が何なのかは私にはよくわりませんが、きっとコジロー君は女性陣の心を捉える魅力を備えていたのでしょう。もっとも先輩格のチャッピーからは全く認めてもらえていませんでしたが。

「おすわり、おて、おかわり、まて!」などは教えるとすぐにできるようになりました。おかしかったのは救急車がサイレンを鳴らして走っていると周波数、波長が合うのか「ウオーン」と遠吠えをすることでした。野生の血が騒いでいたのかもしれません。

やんちゃぶりも相変わらずでした。空き地で人がいないのを見計らって繋いでいた紐から放してあげると、嬉しそうに全速力で私の周りを何度も走り回ります。ところがこちらが油断していると、遠くに人影を見つけて一目散に走って行きます。「これはまずい!」と思って追いかけて行くと時遅し。コジロー君がその人に飛びついたりしてじゃれています。幸い、犬好きの方だったからよかったものの、犬嫌いの方だったなら大変なことになっています。コジロー君が喜んで走り回る様子を見たくて時折、紐から外してあげていましたが、これは危険と隣り合わせの冒険でした。

そんなコジロー君との楽しい生活が続いていた2000年の春、私が会社から大阪転勤の辞令を受けました。高校生の息子、家内、チャッピー、コジロー君は千葉に残り、私だけ単身赴任で大阪に行くことになりました。コジロー君の面倒は家内に見てもらうしかありません。申し訳なく思いましたが、家内は嫌な顔もせずに散歩から餌やり、予防接種などよく面倒を見てくれました。

散歩の順番もまずは先輩格のチャッピーから。これを間違えるとチャッピーがヘソを曲げて大変なことになります。市の予防接種に連れて行くと興奮状態なこともあり、並んで順番待ちをしている間に他の犬と取っ組み合いの大げんかになることもあったようです。これに懲りてその後は私が動物病院に連れて行って予防接種をしていました。

私が単身赴任中、家内がコジロー君を散歩させている最中にとうとう事件が起きました。ご近所の何人かで犬を連れながら立ち話をしていると、それに嫌気がさしたのか、何と、コジロー君がご近所の小型犬の耳をくわえて上に放り投げてしまったのです。その小型犬の耳からは出血しています。これには家内も大慌て!平謝りに謝ってお許しを請いました。家内は改めてその方のご自宅に菓子折を持ちながらお詫びに伺いました。その方が大様に許してくれたので事なきを得ましたが、訴えられていてもおかしくはありませんでした。
何が気に入らなかったのか、郵便配達の方のバイクに跳びかかっていったこともありました。大阪で単身赴任生活を送りながら、コジロー君のしでかしに気を揉む日々でした。

翌年、わが家にまた変化が訪れます。息子が京都の大学に進学したので、家族皆で関西に住めることになったのです。チャッピーは室内犬なので心配はありませんでしたが、問題はコジロー君です。今さらやんちゃ坊主をどなたかに貰ってもらう訳にもいかず、思い切ってコジロー君も関西に連れて行くことにしました。

それまで単身赴任ではマンション暮らしでしたが、室外犬のコジローを飼うとなれば一戸建てを探すしかありません。息子が大学に通う京都と私が会社に通う大阪の中間地点、高槻市に中古の一戸建て住宅を借りることができました。

ところがここで問題発生です。引っ越し業者にコジロー君の輸送もお願いするとこれがノー。生きものは運ばないということです。それからコジロー君を関西まで運んでくれる業者を探しましたが、なかなか見つかりません。そうこうしているうちに引っ越しの日が近づいてきました。

「しようがない。それなら自分で運ぶしかないな!」。私は中型犬用のケージを購入してそこにコジロー君を入れて新幹線に乗り関西まで連れて行くことにしました。近くの駅で聞くと手回り品、荷物として料金を支払えば一緒に運べるということです。拾ってしまった愛犬とはいえ、まさか大阪まで大きな手荷物として犬を運ぶ羽目になるとは思いもよりませんでした。

途中で暴れないように事前に睡眠薬を飲ませ、嫌がるコジロー君をケージに何とか押し込めいざ出発。当時わが家には車がなかったのでケージは私が漕ぐ自転車の荷台に乗せてまずは最寄り駅まで。通勤ラッシュ前の早朝に家を出ましたが、コジロー君は自分はどうなってしまうのか—大いに不安だったようで「ウオーン!」と例の遠吠えを荷台の上で繰り出して叫んでいました。

新幹線でも人があまり来ないデッキに置いて不安そうに震えるコジロー君を慰め励ましつつ、電車を乗り継ぎ、昼前に何とか高槻の駅に到着しました。ケージから出してやり紐をつけて家に向かい始めたとたん、脇道の草むらに入り長々と小用を足しました。それもそのはず。慣れないケージの中では用も足せず、5時間近くも我慢していたわけですから。コジロー君にとっては辛い体験でかわいそうでしたが、救いはそんなことも忘れたように大阪の新天地の散歩、冒険にイキイキと心躍らせるように前向きに進んで行く姿でした。

大阪でのコジロー君との生活でもいろいろなことがありました。実は私は翌年にはまた東京勤務で異動となり、大阪勤務はわずか2年、コジロー君やチャッピー、家内、息子と高槻で暮らしたのはわずか1年でした。しかしこのコジロー君と過ごした大阪暮らしの1年は極めて中身の濃い1年でした。

一番の驚き、特筆すべきことはコジロー君と散歩している最中にブタの散歩と行き会ったことでしょう。いつものようにコジロー君と歩いていると突然コジロー君が腰を抜かしたようにストップして座り込んでしまったのです。先方を見ると、何と、紐に繋がれたブタさんがこちらにノロノロと向かってくるではありませんか! ブタさんは唖然とするわれわれの横を悠々と通過して行きました。「トンでもある、トン出る場面」に遭遇したわれわれは慌てて家までトンで帰りました。

このほかにも大阪でのコジロー君との暮らしではいろいろなことがありましたが、大阪暮らしで悲しく、残念だったのは先輩格のチャッピーが亡くなってしまったことです。その原因は私で、古くなった豆菓子を与えたために食中毒を起こしてしまったのです。同じものをコジロー君にも与えましたが何ともなく、小型犬で体力のないチャッピーのほうが犠牲になってしまいました。今でもチャッピーには申し訳ないことをしてしまったと後悔しています。

さて残念ながらわずか1年で大阪暮らしも終了。息子を関西に残してわれわれは千葉に戻ることになりましたが、また新幹線に乗せての辛い旅を覚悟しましたが、今度は頼んだ引っ越し業者がコジロー君を車で運んでくれるとのことなので一安心。

われわれが一足早く千葉の家に帰っていると翌日、コジロー君は車に乗って颯爽と帰ってきました。1年振りの懐かしいわが家に戻り、辺りをかぎまわり、ホット一息ついているような様子が滑稽でした。もう前向きなコジロー君の頭の中からは、ブタさんに遭遇するなどした驚きの大阪暮らしの記憶は消え去っているかのようでした。


追伸:ヤッシーが本の第2弾を出しました。「働く方・働く場改革 人と職場を活性化する笑談力・考動力 〜笑いをうむ19(いっきゅう)のワザ〜」(ビジネス教育出版社)。ご購読いただければ「笑いのコミュニケーション」と「考えて動く力」を磨くための一助となるはずです。

 

ヤッシー

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