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第6回 浮気疑惑の処方箋①〜妄想列車は止まらない

<前回のお話>「ストレスフリーな人間関係が私にも!〜慈悲の瞑想」
http://hotke.jp/2019/10/03/第5回「ストレスフリーな人間関係が私にも!」/

夫が職場の元カノと!? 疑惑の走行距離

縁がわに腰をかけたキタオの視線は、頭上の青空に向けられていた。
先日、ユキコから「ママ友に会って悩みを聞いてもらえませんか?」と頼まれており、今日はその約束の日である。
ユキコから予告されたママ友の悩みは“夫の浮気”。よくある話とも言えるが、人類普遍の問題とも言える。
「執著の対象が増えるほど、悩みも増えていく。」 お釈迦さまの教えに、キタオはしばし思いを馳せた。

「キタオさ〜ん、今日はよろしくお願いします!」
陽気に手を上げて近づいてくるユキコ。その背後に、一人の女性がつき従っている。
「友人のユリさんです。ユリさん、この方が例のキタオさんよ。」
「今日はお時間をいただいてしまって、本当にすみません。よろしくお願いします。」
申し訳なさそうに、か細い声で話すユリ。うつむきがちな顔は、心なしか暗くくすんで見える。

「キタオです。はじめまして。まあ、ひとまずお二人とも座りませんか。ここのお庭はなかなか趣があって…」
「それよりキタオさん、聞いてくださいよ〜!」
季節の話で和んでから…と考えていたキタオの段取りに、ユキコが容赦なく切り込んだ。
「ユリさんのダンナ、すっごく怪しいんですよ。ユリさん、キタオさんは、どんなことにもすっごくいいアドバイスをくれるから、今日は何でも話して!」
「はい…」
「でね、キタオさん。ユリさんのご主人、最近何となくよそよそしいし、仕事の帰りも遅くなって、お風呂に入るにも脱衣所にスマホを持って行くんですって。それって怪しくありません!? 変化のきっかけは何だっけ?ユリさん。」

「はい…。主人と私は同じ会社の同僚だったんですけど、子どもができて私だけ辞めたんです。でも、主人が私の前に付き合っていた彼女はまだ結婚せずに会社に勤めていて。最近、その元カノが、主人と同じ営業所に配属になったと、まだ会社に勤めている私の同期が教えてくれて…。
主人の行動が怪しくなったのは、それからなんです。」

「スマホの他にも、何か怪しいことはありますか?」と、キタオはユリに尋ねた。
「主人は職場に車で通っているんですけど、この前、出勤前と帰ってきてからの走行距離をチェックしたら、職場と家の往復だけとは思えない距離を走っていることが分かって。
事務所に着いた後は会社の営業車で走り回るから、自分の車を使うのは、家と事務所の往復だけのはずなんですけど…。
元カノは事務所に電車通勤しているらしく、1時間半くらいかかるってことは元同期から聞いていて。だから、仕事の後に家まで送ってあげているんじゃないかと思って……。それからほとんど毎日、メーターのチェックをせずにはいられなくなっちゃったんです。」

「毎日、ご主人に隠れてメーターのチェックですか。なかなか骨の折れるルーティンを始めたんですね(笑)。」

ユリは恥ずかしそうにうなずきながら、話を続けた。
「主人は近頃、仕事が忙しいとかで日曜や祭日も仕事に行くんですけど、その時は特にメーターの距離が伸びているんです。もしかしたら海や山へデートに行ったのかもしれないと思うと、カーッとなって主人を問い詰めたくなってしまって。」

「なるほど。で、問い詰めてみたんですか?」

「いいえ。車のメーターをチェックしたなんて言えないから、何も聞けなくて。」

ユキコが刑事ドラマさながらに、「これはクロですね」という目でチラリとキタオを見る。
その視線には応えず、キタオはうつむくユリに尋ねた。

「ちなみに、ご主人の浮気疑惑は今回が初めてですか?」

「…いいえ。じつは、結婚前に付き合っていた頃二回ほど、まあ二人の女性という意味ですけど、浮気をされたことがあるんです。二回目の時はさすがに別れようかと思ったんですが、情も移っていましたし、ちゃんと別れてくれたようだったので、許してそのまま付き合って結婚しました。」

「なるほど、前科二犯ですか(笑)。それでも結婚したなんて、よっぽど魅力があったんでしょうね。ところでご主人は、お給料をちゃんと家に入れてくれていますか?」

「はい。小さい子どもが2人いるんですけど、主人のお給料だけで生活はできています。」

「キチンと収入はあるわけですね。では、ギャンブルにハマったり、酔って暴力をふるうとかは?」

「まったくありません。家事はほとんどしないけど、子どもたちにも関心を持ってくれるし、私にもやさしくて、平均以上の父親であり夫だと思います。」

すかさずユキコが割って入る。

「それに、ねっ。ほらユリさん、今お腹に…ね?」

「ほう、3人目のお子さんが。それはおめでたいですね!」
キタオが微笑みかけると、ユリはうれしいような切ないような、なんとも複雑な表情を浮かべた。
「はい。そんなときなので、浮気を疑って精神的に不安定でいるのは胎教に良くないとは思っているんですが…。」

「確かにねぇ・・・わかりました。お腹の赤ちゃんのためにも、ひとつユリさんの憂いを晴らそうじゃありませんか。」

「良かったわね、ユリさん!キタオさんが請け負ってくれたら、もう大丈夫よ!」
横から太鼓判を押すユキコ。ユリの顔がフッとほころんだ。

<続く>

サティ〜ず

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