家族とつながる

家族の諸行(因縁によって生じたこの世の一切のこと)「母の場合」#13

母の健康面での変化が、50歳代半ばより現れた。先ず、すごく疲れやすくなった。外出して戻ると、暫く横になって休まないと次の動作に移れない。その内、手足の衰えが顕著になった。腕の周りには、タプンタプンの肉がついているので、外見はそうは見えない。しかし、筋肉はどんどん細っていく。少し重いものは持てないし、ビンの蓋等は明けられなくなった。ビニールの袋も、口にくわえ引き千切って、開けるようになった。

その様な体でも、頭と口は衰えない。いろいろなもの事への、好奇心も旺盛だった。もともと、まだ元気なころから、私が行く赴任地へは、やって来た。最初の神戸を京都旅行とセットでやって来て、私に案内役をさせた。兄の赴任先に行くことはなかった。体が衰え始めても海外へもやって来た。米国のミシガンやニューヨークにも妹や父に付き添って貰いながらやって来た。このころの父は、すっかり宗旨替えをしたように、母の面倒を見るようになっていた。しかし、母の注文の多さに辟易とすると、我が家に母を託して、単独行動で出かけてしまうところは残っていた。頭と口の回転では、対抗できなかった様だ。

その内、歩く方もままならなくなった。すぐ疲れるし、路面が少し凹んでいるだけで、転んでしまう。先ずは杖のお世話になった。しかし見た目を気にする母は、柄の太い、少し洒落たデザインの傘を代用品にしていた。

やがて、母が夜中にトイレに起きた時、背中を痛がり動けなくなった。心臓病のような気配もあり、救急車で入院した。心配した心筋梗塞のようなことは起こしていなかった。この際ということで、駒沢の国立病院で、体全体の筋力低下の原因を調べてもらった。その後、父の伝手(つて)、親戚の医者の伝手(つて)で、様々な病院で検査を受けた。しかし原因が分からなかった。

母の為、家の中を改造した。階段に簡易の昇降機をつけた。風呂場も椅子に座ったままで、湯船に出入りができるようにした。伝い歩きができるように、いろいろな場所に手すりが付いた。しかしすぐに車いすの生活が始まった。この時から、もとの信仰団体へは出かけなくなった。設備的に、身障者が出入りすることに無理があった。

そのタイミングを見透かすかのように、いろいろな信仰団体の人々が、母のもとを訪れるようになった。母の女学校時代の友人等、様々な伝手でやってくる。手かざしで、治療のようなことをしてくれる人々。塩の袋を家中に置いていく人々。そして、集団結婚式で知られている教団の人々。その内、車椅子ごと乗れる車で迎えに来るようになった。

入れ替わり立ち代わりやってくる。病院に行く日以外に空いている日に、訪れるか、車で迎えに来る。母は、どこも中身は素晴らしい教えを説いていると言う。大切に扱われることで、満足しているかのように見受けられた。もともと、信仰的に、自らが拘り、求めていたものが満たされずに、わだかまりが残ったままだったのかもしれない。父も心配になったのか、週末等時間の空いているときには、母について行くようになった。近くのターミナル駅近辺のその教団施設で、写経のようなことを父自身が始めた。何を気に入ったのか分からない。

格好のお客さんになっていた節がある。お布施もしたのだろう。多宝塔から、その他にもいろいろな信仰団体の品々が、我が家に登場した。このころから、兄と母の仲が険悪になった。長年母の側につき、忠実に母の見方をしてきた兄が、袂を分かった。同じ家に居ながら、母と顔も合わせず、口も利かなくなった。

直接の切掛けは、母のもとを訪れたある信仰団体の人が、応接に出た兄嫁にお布施を強要した。母とは別にあなたもしなさいということだったらしい。母もそちらの側になり、子供の学資保険を解約することを要求したらしい。それまで、本当の母親のように、寄り添って来た兄嫁にとって、驚愕の出来事だった。当然兄は、母と対峙する様になった。

私はこの間、海外や国内の事業所に転勤していて、我が家に何が起こっていたのか知らなかった。後々に、兄や兄嫁から聞かされて知るところとなった。母がいよいよ寝たきり状態になった時、兄が動いて、多宝塔はじめ様々な品々がそれぞれのもとに引き取られていった。

母のベッドのわきの机に、もとの信仰団体の大きな字の法華三部経が、再び置かれるようになった。それに毎朝、目を通すようになった。そのころから、次々と訪れていた信仰団体の足は止まった。ただし、仲の良かった女学校時代の友人は、最後まで手かざしに訪れた。

次は、母がいよいよ最期の時を迎える話です。

イチゾウ

イチゾウ

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団塊世代、重厚長大産業出身、第二の人生真っ只中。

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